
「背中のファスナーに手が届かない」
「エプロンの紐を後ろで結びにくい」
「背中をかこうとしても手が届かない」
「左右で腕の回しやすさが全然違う」
このように、腕を後ろへ回す動作がしにくいと感じていませんか?
肩が動かしにくいと、「肩関節が硬いから、とにかくストレッチしよう」と考えがちです。しかし、肩の動きには肩関節だけでなく、肩甲骨や胸郭、そして肩甲骨の表面についている**棘下筋(きょくかきん)**なども関係しています。
今回は「腕が後ろに回らない」というお悩みと棘下筋の関係を中心に、自宅でできるセルフチェックとセルフケアを紹介します。
腕を後ろに回す動作、実はかなり複雑です
試しに、片手を腰の後ろへ回してみてください。
そのまま手を背中の上へ滑らせていく動作は、肩関節では主に、
伸展+内転+内旋
が組み合わさっています。
さらに肩甲骨も連動します。
つまり、「腕が後ろに回らない=一つの筋肉だけが悪い」と単純には判断できません。
肩関節の動き、肩甲骨の動き、筋肉の緊張などを総合的に確認することが重要です。
「棘下筋」ってどこの筋肉?
棘下筋は、肩甲骨の後ろ側から上腕骨につながっている**ローテーターカフ(回旋筋腱板)**を構成する筋肉の一つです。
主な働きは、肩関節を外側へ回す外旋です。
さらに、腕を動かすときに上腕骨頭を安定させる重要な役割もあります。
そのため棘下筋の状態が悪くなると、
- 肩の後ろが張る
- 腕を動かしにくい
- 肩を回すと違和感がある
- 腕を後ろへ回しにくい
といった状態に関係することがあります。
ただし、棘下筋だけで腕の後ろ回しが決まるわけではありません。
棘下筋の特徴「肩と違う場所に痛みを感じることも」
棘下筋を考えるうえで知っておきたいのが、トリガーポイントによる関連痛です。
トリガーポイントとは、筋肉の中に生じる過敏なポイントで、刺激した場所とは異なる場所に痛みを感じることがあります。
棘下筋では、
肩の前側
上腕外側
前腕
手の周辺
などへ関連痛が生じることがあります。
「肩の前が痛いから、肩の前だけを揉んでいる」
という方でも、実際には肩甲骨側の筋肉が関係しているケースがあります。
だからこそ、痛いところだけを見るのではなく、肩全体の動きを確認することが重要です。
まずは「腕の後ろ回し」をセルフチェック!
左右を比較してみましょう。
STEP1
右手を腰の後ろへ回します。
STEP2
手の甲を背中側につけるようにして、ゆっくり上へ動かします。
STEP3
反対側も同じように行います。
ここで、
- 片側だけ明らかに上がらない
- 肩の前が詰まる
- 肩の後ろが張る
- 腕に痛みが出る
- 肩甲骨ごと大きく動かさないと上がらない
などがないか確認してください。
無理に高い位置まで上げる必要はありません。
痛みが出るところまで押し込むのは避けましょう。
なぜ棘下筋が硬くなる?
① デスクワーク
パソコン作業では腕を身体の前に出した状態が長く続きます。
肩甲骨を大きく動かす機会も少なくなるため、肩周囲の筋肉に負担が偏りやすくなります。
② スマートフォン
スマートフォンを見ると、
頭が前へ出る
↓
背中が丸くなる
↓
肩が前へ入る
という姿勢になりやすくなります。
この状態が長時間続けば、肩甲骨周囲の筋肉にも影響します。
③ 同じ側ばかり使う
マウス操作、バッグを持つ、家事、スポーツなど、日常生活では左右を均等に使っているとは限りません。
そのため、
「右は回るのに左は回らない」
といった左右差が生じることがあります。
④ 肩甲骨の動きが少ない
肩関節と肩甲骨は連動して動きます。
肩甲骨周囲が硬くなっている状態で、腕だけを無理に動かそうとしても、スムーズな動作ができないことがあります。
自宅でできる「棘下筋セルフケア」
棘下筋は肩甲骨の後面にあります。
まず反対側の手で、肩甲骨の後ろ側を触ってみましょう。
肩甲骨の中央から少し外側にかけて、硬さや張りを感じる場所がないか探します。
やり方
① 棘下筋周辺の硬い場所を探す
② 指で軽く圧を加える
③ 痛すぎない強さで約10秒キープ
④ 力を抜いて、肩をゆっくり回す
ポイントは、強くゴリゴリ揉まないこと。
強く押せば効果が高くなるわけではありません。
心地よい刺激、または軽い圧迫感を感じる程度にしましょう。
腕が後ろに回らない】瞬間5秒のテニスボールマッサージで治す!棘下筋はがし
セルフケアの前後で必ず確認!
セルフケアが終わったら、もう一度腕を後ろへ回してみます。
確認するのは、
「どこまで届いたか」だけではありません。
- 動かしたときの軽さ
- 肩の詰まり感
- 肩甲骨の動かしやすさ
- 左右差
なども比較してみましょう。
セルフケアは「とりあえず揉む」のではなく、動きをチェック→ケア→もう一度チェックまでをセットにするのがおすすめです。
やってはいけないセルフケア
腕が後ろへ回らないからといって、無理やり反対側の手で引っ張るのは避けましょう。
特に、
× 強い痛みを我慢して伸ばす
× 肩を無理に背中の上まで押し上げる
× 棘下筋を強くゴリゴリ押す
× 痛いのに毎日繰り返す
といった方法には注意してください。
「痛いほど効いている」とは限りません。
棘下筋をほぐしても変わらないのはなぜ?
ここが重要です。
腕を後ろへ回す動作には棘下筋だけではなく、
肩関節・肩甲骨・胸郭・広背筋・大胸筋・小胸筋・肩甲下筋など
さまざまな組織が関係しています。
そのため、棘下筋をセルフケアしても変化がほとんどない場合は、別の場所が動きを制限している可能性があります。
「硬い筋肉を全部伸ばせばいい」というわけでもありません。
どの動きが不足しているのかを評価することが大切です。
四十肩・五十肩との違いは?
腕が後ろへ回らない症状は、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)でもみられます。
特に、
- 夜中に肩が痛くて目が覚める
- 服を着替えると強く痛む
- 髪を結べない
- 腕を上げても痛い
- 肩が全方向に動かしにくくなってきた
という場合は、単純な筋肉の硬さだけとは限りません。
無理なセルフケアを続けず、一度状態を確認することをおすすめします。
また、転倒後の強い痛み、明らかな筋力低下、しびれなどがある場合には、医療機関での評価が必要になることがあります。
荻窪きりん堂整骨院では「なぜ回らないか」を確認します
荻窪きりん堂整骨院では、
「腕が後ろに回らないから棘下筋をほぐす」
だけでは終わりません。
まず丁寧にお話を伺い、
姿勢分析
動作分析
肩関節の可動域
肩甲骨の動き
筋肉の緊張
左右差
などを確認します。
そのうえで身体の状態に合わせて、
- トリガーポイント療法
- ドイツマニュアルセラピー
- 筋膜リリース
- 関節モビライゼーション
- 神経ストレッチ
- カウンターストレイン
- メディカルマッサージ
- ボキボキしないゆがみ矯正
などを組み合わせて施術します。
さらに、自宅で行うホームケアまでお伝えすることを大切にしています。
「肩が硬いだけ」と放置しないでください
腕を後ろへ回せない状態は、日常生活のさまざまな場面で気づきます。
「服を着るときだけだから」
「年齢のせいだから」
とそのままにしている方も少なくありません。
しかし、肩の動きに左右差があったり、以前より明らかに動かしにくくなったりしている場合は、身体からのサインかもしれません。
まずは今回紹介した方法で、左右の動きを比べてみてください。
そして棘下筋のセルフケア後に、もう一度腕を後ろへ回してみましょう。
それでも動きにくさや痛みが続く場合は、棘下筋だけにこだわらず、肩関節や肩甲骨を含めて状態を確認することが大切です。
荻窪きりん堂整骨院では、一人ひとりの「なぜ動かしにくいのか」を確認し、施術とセルフケアの両面からサポートしています。


